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雲のように…月のように…

雲のように飄々と…月のように夜道を照らし…

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赤線

私が生活している繁華街から東に500メートルほど離れた所に、数件のラブホテルがございます。その一角に汚い2階建ての雑居ビルが2棟あるのです。黄色の集合看板が点いており、店の名前は全て女性の名前であります。地元でも知っている人は少ないのですが、そこは通称『赤線』・・・売春地帯なのです。

東京や名古屋の一部に売春婦がズラッと立って並んでいる地域がありますが、それとは違い皆形式上はスナックの形をとっております。雑居ビルとは言ってもプレハブに毛の生えたような粗末な建物であります。中に入ると真ん中が通路になっており、両サイドにガラスの引き戸(昔の商店のような戸)が並んでいます。一つの店の幅が2メートル位、その中に小さな3人掛けほどのカウンターがあり、お姉さん達が座っております。客は通路からお姉さん達を品定めして歩くのです。良く言えばオランダの『飾り窓地帯』の極小版のような所であります。

売春を生業にした一角であるにもかかわらず、なんとここにはヤクザが殆ど介入しておりません。昔からそうらしいので理由は一切わかりませんでした。何軒かの店は一応名前だけのケツ持ちがいるのですが、本当に名前だけでミカジメ料も無いようなのです。仕切っているのは各店のママ達、本当に『女の聖域』のようであります。不思議な事に警察もこの一角にはあまり介入しては来ないのです。

私も若い頃から「あの辺で売春をやっている。」というのを噂には聞いていたのですが、ほんの何年か前までは実態を知りませんでした。3年程前、以前街でヘルスに勤めていた娘から「相談があるんですけど、来て頂けませんか?」との連絡がありました。場所を訊いたら、なんとあの『赤線』だと言います。その一角の内情を知る者は意外なほどに少なく、謎に包まれている地域であります。興味半分、早速行く事になりました。

小汚い建物の中に入り真ん中の通路を歩いていくと、先にお話したようにガラス戸の列。4畳半程度の店の中が全て丸見えであります。お姉さん達の視線が集まり、戸を開けて声を掛けてきたり、笑顔で手を振ってきたりと客でも無いのに真っ赤になってしまいます。噂ではビックリするようなババァばかりと聞いていたのですが、実際には若い娘が多くて驚きました。呼ばれた店の看板は奥の方にありました。

店に入ると、私に連絡をよこした娘の他に若い娘が2人、そしてカウンターの中に50歳位のママがおりました。相談の中身は何の事はない、ママの個人的な『取立て』の件でした。仕事の話は早々に終ったのですが、この異様な外国のような雰囲気が面白くて2時間も呑んでしまいました。一応スナックなので呑む事もできるのです。まぁ、呑んで帰るだけの人間は少ないのですが(笑)。

後日、取立ては無事に終了したのですが、ママが私を気に入ったらしく色々な部分でお付き合い頂く事になりました。変な意味ではありません・・・(汗)。正月の注連縄(しめなわ)、ブランド物のコピー品、バイアグラの類・・・etc、色々な物を注文頂くようになったのです。そんなお付き合いを続けているうちに「保険証を貸してくれる女性はいないか?」という電話が来たのです。

「どしたのママ?」
「うちの娘で保険証作れない娘がいてね。病院行かせたいんだけど、どうにかならないかな?貸してくれた人にもお礼はするから・・・。」
「捜してみるけど、悪い事に使うなよ。」
「わかってます。大丈夫!」

保険証を届けに行った時にゆっくり話を聞くと、ここにいる娘達の半分以上の娘が色々な事情を抱えているとの事でした。山ほど借金を抱えていたり、家出中であったり、中には自分の素性を一切語らない娘もいるそうです。月に一度、全員に性病の検査や避妊薬をもらう為に病院に行かせているそうなのですが、たまに保険証を作れない娘が出てくるそうなのです。皆毎月同じ病院に通いすでに顔なじみ状態なので、内輪での保険証の貸し借りはまずいらしいのであります。

色々な事情がある・・・、まぁそりゃそうだろうなぁと思いました。
何の事情も無ければ黙ってソープランドで働けば良いのですから、敢えて非合法に身を落とす必要はございません。なのにここに居るという事は、なんらかの事情があると思って間違い無いのでしょう。

私は彼女達のしている事を一切否定いたしません。
それどころか立派に職業だと思っております。誰でもご存知のように『売春行為』はあきらかに違法であります。かと言って、世の中から売春が消えた事など1年だってありません。ソープが合法で売春が違法の意味がわかりません。需要と供給が成り立って、必要が故に存在するものはちゃんと認めてやるべきだと思っております。

自らのだらしなさから身を売るはめになった娘もいるでしょう。しかし、やむにやまれぬ事情から身を売っている娘もいる事でしょう。生きてりゃ人間色んな事情があるのです。周りからは理解されなくとも、それぞれ彼女達本人の中には立派に理由は存在していると思うのです。クソガキ共の援助交際などと同じ次元で考えた事はございません。クソガキ共に助けを求められても私は聞く耳を持たない事でしょう。

日本全国で考えると売春に係わっている人数は相当なものであると思います。外人なども含めると大変な数字になるのではないでしょうか。実際に存在し、根絶しなければならない理由も無い、ましてや根絶などできる訳が無い、ならばきちんと法で守ってやるべきだと思うのです。特に医療面はケアしてやらなければいけません。

わが街の『赤線』では、ママ達がしっかりと管理をしております。しかし、携帯電話などを利用して売春をしている者達はどうなのでしょう。性病や伝染病などの検査をしているのでしょうか。おそらくそんな面倒な事はしていないと思うのです。下手をすると病気を撒き散らしかねません。一刻も早く医療面での支援を考えるべきだと思います。

私は仕事柄、合法・非合法に関係なく『風俗』に携わる者達を多く知っております。その中には人として尊敬できる人間も多くいるものです。私は『赤線』にいる娘達が好きであります。月に一度位ウーロン茶を飲みに行くのですが、違う店の娘でも普通に挨拶をしてくれる事があります。

「あっ、ご苦労様ですっ(笑)♪」
どうやら私は女性の笑顔に弱いようであります(照)。
皆色々な境遇や背景があるのでしょうが、前向きに頑張ろうというエネルギーが感じられる娘達なのです。あの娘達を見ていると、ああ自分も頑張らなきゃいかんなぁと思うのです。常に良い影響をいただいております。

一度、ママの店全員を連れて焼肉を食いに行った事があります。綺麗な人なのですが、私より2歳上の姉やんがおりました。私も歯に衣を着せない男なので「いい歳こいて何でこんなとこに居んのよ?」と訊いた事があります。・・・失礼な男であります(汗)。
「子供達が卒業するまで、恥ずかしい思いはさせたくないのでっ(笑)♪」良い笑顔で答えてくれました。

詳しく聞くと旦那と別れ、3人の子供達を一人で育てているとの事でした。昼間は普通の会社に勤め、夜は『赤線』で働いているそうです。自分がかく恥などどうでもいいけれども、子供達だけには金銭的にも恥ずかしい思いはさせたくない・・・、笑顔でそう言っておりました。なんとも言えない気持ちになりました。

立派だとしか言いようがございません。簡単に親が子を殺し、子が親を殺す時代にあってこの生き様であります。正直、感動いたしました。銭があるのに給食費も払わないクズ親共に聞かせてやりたいものです。この人達に何かあれば飛んで行って助けてやろう・・・、そう思っております。

今では、ミカジメも取らずにケツを持っている組がある事にも納得がいきます。私もその内の一人であります。ママには、何かトラブルがあったらすぐに私の名前を出すように言ってあります。

法の陰で暮らす者達にも、心清い人間がたくさんいるものです。きっと世の中のどこかに矛盾があるのでしょう。何年か先に『赤線』の地域一帯に再開発の計画が浮上しております。あそこが無くなると困る人間がたくさんいる筈です。私にはどうする事もできませんが、無くなるその日まで温かく見守ろうと思っています。本当はどこかに受け皿を作ってやれれば良いのですが・・・。


世間では『売春婦』と蔑まれる事も多いと存じます。
しかし『赤線』には明るく前向きなエネルギーで溢れております。


『赤線』・・・強く明るく挫けない女性達が、自分達の力で作り出した尊敬すべき世界であります。

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