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雲のように飄々と…月のように夜道を照らし…
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年号が平成になったばかりの頃、300人位のキャパの洋風居酒屋で働いておりました。ホール・厨房ともに従業員数も多く、当時としてはそこそこの規模の店だったと思います。私達の世代であれば大抵一度や二度は行った事がある・・・、そんな有名な店でした。
当時、歳は18でしたが既に水商売を転々としており、好条件で引き抜かれてきたのであります。店長、マネージャー(料理長)、主任、と役職がありまして、私はこの会社では主任として迎えられておりました。年中無休で午後5時から午前1時まで営業しているのですが、平日だと11時位にはピークを過ぎて一段落と言った感じでした。
その日、私はレジを打ち続けてウンザリしておりました。レジは体を動かせないのであまり好きではなかったのです。時計は11時をまわりやっと一段落ついた頃、バイトの子をレジに立たせて散歩がてら店内をグルッと一周しに行きました。
「HEY! Excuse me!」
(はぁ?何言っちゃってんだ、コノ野郎?)と思い振り向くと、テーブル席に50過ぎと思われる日本人と白人の紳士が座っておりました。いつの間にご案内したのでしょう。レジに夢中で入店に気が付きませんでした。外人なんか珍しいのに・・・(汗)。
「はい、何か?」
「ビール2つと、コレとコレ追加!」
注文は日本紳士の方がしてくれました(笑)。
注文をしてくれたお客様には、一言二言声をかけるよう心がけていたので何気なく「アメリカの方ですか?」と聞いてみたのです。日本紳士が「そうなんだよ。古い友達でわざわざ会いに来てくれたんだよ!」と嬉しそうに答えてくれました。すると米国紳士が「◎×※△・・・、#★@※○・・・?」・・・、オォウッ(°°;)。
日本紳士の通訳によると『何で君だけ制服が違うんだい?』との事でした。「はぁ、私主任なので。」
『オー!君はまだ若いんじゃないのかい?』
「ええ、18歳です。」
『こんな大きな店で、それは凄いね。』
「ありがとうございます。」
『日本のイメージが変わったよ!』
「そうですか・・・。」
日本紳士の通訳を介して、こんな会話が成立しました。日本のイメージ?何か変な印象を与えてしまったのかなぁ・・・、なんて考えておりました。会計が終わった後、軽い社交辞令で「ありがとうございました。是非、またいらして下さい!」言うと紳士たちは私と堅い握手をして上機嫌で帰っていきました。
次の日の11時頃、忙しいピークを超えたので厨房で※賄いを頂いておりました。するとバイトが慌ててやって来て「昨日の外人さんが一人で来て、主任を呼んでくれって言ってます。多分・・・。」
「え~~~!?」( ̄□ ̄;)!!
(外人に社交辞令って本当に通じないのか?一人って・・・、通訳のジェントルメンもいねぇのか?どうすんのよ?どうすんのよ、俺?)
※賄い(マカナい)・・・従業員用の食事の事です。
まぁ、本当に来てしまったものは仕方がありません。彼が悪いのでは無く、安易に社交辞令を言った私が悪いのです。開き直って日本語で通そうと思いました・・・(汗)。
「ああ、どうも!いらっしゃいませ!」
「◎×※△・・・、#★@※○♪」・・・、なんか喜んでます(汗)。
そして、私にここに座って一緒に呑め!と言っているようであります。多分・・・。居酒屋ですよ・・・。そんなサービスはやっていませんよ・・・。しかし、断る英語がわかりません。
もし私が一人で居酒屋に行き、バイトのお姉ちゃんに「ここに座れ!」と言ったらどうでしょう。軽く伝説になりそうです・・・。いくら文化が違うと言っても、このオッサンはそれを堂々とやっております。大したものであります。『よ~し!とことん付き合ってやろう!』と思いました。ここから、身振り手振りの会話が始まりました。
不思議な事にマンツーで話をしておりますと、相手の言わんとしている事が何となく解ってまいります。『君の勧める物を注文するよ!』だとか『日本のアレが美味かった!』なんて話をしておりました。解りづらい話でも紙に書けば、結構互いに解るもので驚きました。
段々とコミュニケーションがとれてきて、笑いが増えてきた頃に『君はきっと成功するよ!』という事を言われました。
「どうしてですか?」
『だってその若さでこんなに大きなレストランの責任者だろ!』
「日本では飲食業の地位はそんなに高くないんですよ。」
『違う職業に就いても同じだよ。君はうまくいく!』
「でも学歴も無いし・・・。」
『私だって高卒だよ(爆)』
高らかに笑うと彼は自分の名刺を出しました。ロサンジェルスの、日本で言えば地方銀行の頭取でした(驚)。普通のサラリーマンの家に生まれ、皿洗いもやったし、バーで働いた事もあると言っておりました。さすがアメリカンドリームですね。
『一つ良い言葉を教えるよ。Take it easy! 』
「どういう意味ですか?」
『何でもできるって事さ。辛い時でもTake it easy! 勝負に勝った時でもTake it easy! どんな時でもTake it easy! 魔法の言葉さ。私の一番大切な言葉だよ。』
『日本がダメならいつでも来なさい。言葉は向こうで覚えれば良いから心配はいらないよ。大丈夫、君は絶対うまくいく。Take it easy! 』
そう言うと彼は名刺に自宅の住所と電話番号を書き足してくれました。お互いに片言同士、たったこれだけの会話をするのに3時間もかかってしまいました。時間外営業です・・・。そして、また堅い握手をして帰っていきました。
名刺は一応保管しましたが、どうせ酔ったノリで置いていったのだと思っておりました。後日、最初に来た時の日本紳士が奥様と二人で店にやってきたのです。
「もしいつか、本当にアメリカに行こうと思うのなら私に連絡を下さい。手助けをするように彼から頼まれましたので(笑)。」と言って連絡先を教えてくれました。どこまでが本気でどこまでがノリだったのでしょう。未だによく解りません・・・。
頂いた名刺は今でも大切に保管しております。
良い想い出として・・・(笑)。
【SECURITY PACIFIC NATIONAL BANK】
PRESIDENT ROBERT.D.REINHOLD
これで私が大成功していれば映画のようで格好良いのですが、現実はそう上手くはいかないようであります(笑)。
『大丈夫!大丈夫!楽勝!楽勝!きっと上手く行くさ♪』
多分そんな意味の言葉であります。
【 Take it easy! 】
魔法の言葉だそうです。(^-^)