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雲のように飄々と…月のように夜道を照らし…
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やっと更新する事ができました・・・(汗)。
ふと気がつけば2月に入って初の記事であります。
この数日忙しく何をしていたのかというと、実は解体工事の現場に出ておりました・・・。
昨年から仲の良い先輩二人と『人夫貸し』をやっております。お洒落な言い方をすれば人材派遣業でございます。ウチの場合は、建築全般に人を派遣しているのであります。
今回は、繁華街の真ん中にある小さなビルの内装を全て取り払う工事を取ってまいりました。元受業者からは職人を8人入れて5日の工期でやってくれとの事でした。ところが、着工前日になって頭をやらせていた若い者と連絡が取れなくなってしまいました。欠員1人分を穴埋めすれば良い事なのですが、現場の指揮をとる者がおりません。結局、建築業に一番詳しい私が現場に出るハメになってしまいました・・・。
作業服を着て現場に出るなんて実に10年ぶりであります。
当日、朝8時前に現場に着くと作業服姿の私を見て職人達は事態が把握できずに固まっておりました。
「お、おはようございます。どうしたんですか?」
「どうもこうもねぇよ・・・。○○の野郎、電話に出ないんだよ。把握してる奴居ないから、代わりに俺が来たのさ・・・。」
「そ、そうですか・・・(汗)。」
朝の一発目から皆に異常に気を使われております。
各フロアの工程を一通り説明し、人の割り振りをして工事開始です。まずは各階の天井から壊し始めました。せっかく来たのだから私も仕事をしようと思い、大きいバールで天井を壊していると私より少し年上の職人が走ってまいりました。
「神谷さ~ん!ちょっと、やめて下さいよぉ!」
「ん?どしたのよ?」
「仕事は自分達やりますから、ゆっくりしててくださいよ。」
「いいんだ、いいんだ。せっかく来たんだから働いてくよ、お前。たまに額に汗して働かないとバチ当たるからさ(笑)!」
「いやぁ~、でもぉ・・・。」
「俺が良いっつってんだから良いだろっ!」
「はぁ・・・(汗)。」
まぁ、やりづらかったんでしょうね(笑)。とりあえず、制止を振り切って仕事をしていた訳ですが、30分もしないうちに辛くなってまいりました。最初は軽いと思っていたバールがやけに重く感じ、真冬だというのに汗が出始めました。
「やっぱ、キツいなぁ~!」
「だから、もうやめて下さいよぉ~。」
そう言われてやめる訳にはいきません。こちらも段々意地になってまいります。しかし、キツい・・・。いくら久々とは言えこんなに疲れるとは思いもしませんでした。歳はとりたくないものであります・・・。そして建設現場で働く職人の皆様、本当にいつもご苦労様です。身をもってその大変さを思い出しました(笑)。
10時の休憩までにはもうフラフラになっておりました。若い者にジュースを買いに行かせ皆で一服しておりますと、元受の社長がやってまいりました。現場に入るなり私を見て固まっておりました。(アンタもかい・・・苦笑。)
「え~?神谷さん、何やってるんですか?」
「ん~、○○が飛んだっぽいんですよね。その代わりで来たのさ。」
「そ、そうですか・・・。んで、手伝ってるんですか(汗)?」
「そりゃあ、せっかく来たんだからさぁ(笑)。」
「そ、そうですか・・・。」
「5日間、終るまでいるからヨロシクね♪」
「は、はぁ・・・。」
この社長、工事が終るまで10時と3時には必ずジュースとお菓子を差し入れてくれました(笑)。
天井を半分位壊したあたりで「おや?」と思う事がありました。今時の建築物ではコンクリートに黄色い泡(カマキリの卵みたいなもの)状の『発砲ウレタン』という物が吹き付けてあるのですが、この建物では懐かしい『岩綿』のような物が出てきました。嫌ぁな予感がしました。
「なぁ、これアスベストじゃねぇ?」
「あぁ、アスベストですね。レベル1ですよこれ!」
「ん?レベル1って良いの?悪いの?」
「最悪です・・・(苦笑)」
「いつもどうしてんのよ、こういう時?」
「除去作業じゃないんで、このまま触らないようにしてやっちゃいましょう。」
「ふ~ん。あ、そう・・・(汗)」
怖ろしい話であります。アスベスト除去には高額の工賃が発生してしまいます。特別に除去作業を受注しない限り発見してもスルーしてしまうらしいのです。きっと世の中にはこんな建物がたくさんあるのだろうと思いました。私達全員、タオルで口と鼻を覆っている程度なので多少の粉塵は吸ってしまったと思います。私の場合、肺がんになってもアスベストの所為ではなく100%タバコの所為だと思います。なんせ、超ヘビースモーカーですから(笑)。
私がいた所為で皆変に緊張したのかわかりませんが、解体作業は急ピッチで進んでいきました。5日間で終らせる予定がこのままでは2日間で終りそうな勢いだったので、少しペースを落とすよう指示いたしました。初日は4時で終了し、次の日からは1時間おきに休憩、3時までに片付けを終らせ皆で一服してから解散、これを4日間続けて無理矢理5日間引っ張ったのです。ダラダラ工事のお陰でダウンせずに済みました(笑)。
実は私、10年ほど前まではよく建築現場に出ていたのです。私の会社では、一般木造建築、断熱工事、内装工事全般などを取り扱っておりました。私は内装のボード貼りが好きで、人が足りない時には喜んで自ら出動しておりました。名古屋駅のJRタワーにも人夫を連れて行った事がございます。春先なのに暑くて死ぬかと思いました・・・。
今回の事でつくづく感じましたが、やはり額に汗して働くのは良いものでございます。ヒルズでドンペリを呑んでいる阿呆共よりも現場で働く人達に金を持たせるべきだと思うのです。建築現場に限らず、広い意味での『現場』であります。
私の言う『現場』というのは、農・漁業の現場、あらゆる物の製造の現場、研究の現場、サービスの現場・・・etc、物事を生み出す最前線で働く人たちの事を意味します。資本主義の理屈はよく解かるのですが、抱える矛盾にも腹が立つのであります。やはり額に汗して現場で働く者には、それなりの高配当を付けてやるべきだと思うのです。
販売システムや流通システムが重要な事は分っていますが、物を作り生み出す人があってこその話であります。当初の目的を見失った投資だの株の売買などを生業としている者などは、私の中では論外であります。『現場』を大切にできる世の中になれば良いなぁ・・・、そんな事を改めて感じました。
一つ余談になりますが『佐川急便』という大手運送屋がございます。今はどうかわかりませんが、一昔前までは会社主催の宴会で実に面白い事をしておりました。宴会会場ではドライバーだけが席に座り、係長以上の役に就いている者は全員壁沿いに立っているのです。宴会がスタートすると社長や重役を筆頭に立っている役職者がドライバー達にビールや酒を注いでまわり延々と接待するのです。
日頃、重労働をこなすドライバーあってこその会社です・・・、そういう意味での宴会であります。事務職以外の役職者は全員ドライバーから出世した人なんですけどね。良い会社であります。世間では色々と言われ続けている会社ですが、実に良い会社だと思うのです。だからこそきっとあんなに大きな会社になったのでしょう。
冒頭で触れた若い者は、未だに連絡がとれません。あの野郎・・・。
しかし、久々に良い経験をさせてくれた事には感謝しております。
ちょっとしか怒らないから早く戻ってくれば良いのに・・・(笑)。
額に汗して働く・・・、人間の正しい姿であります。